研究概要 |
我々が見い出したヒト慢性C型肝炎肝組織門脈域内でのヘモジデリン沈着微小血管の意義を、慢性C型肝炎の進展とインターフェロン治療の予測形態因子の観点から病理学的に検討した。現在、以下の結果が得られつつある。1.この変化は病期の進展した慢性C型肝炎で多く見られ、門脈域の拡大や炎症性細胞の浸潤程度と正の関連性を示した。肝実質の壊死炎症と正の関連性が認められ、肝細胞崩壊に伴い放出される鉄成分を血管内皮が貪食している可能性がある。2.免疫組織化学的検討で、これらの血管ではHLA-class I,class II抗原の発現の増強がみられ、これらの血管内皮での抗原呈示能の亢進が示された。また、これらの血管内皮では細胞接着因子であるVCAM-1,ICAM-1,E-selectin等の発現も増強しており、門脈域内やその辺縁部での炎症性細胞動員に関連することが示された。3.インターフェロン治療後、慢性C型肝炎で肝の壊死炎症反応の消退した例では、内皮にヘモジデリン沈着を認める血管が減少し、また血管内皮での免疫関連分子の発現も低下した。4.ヘモジデリン沈着のため、本来血管内皮が持っている種々の生理機能が障害され、それに伴い肝内微小血行障害の発生、さらに血管内皮から細胞外基質(ラミニン等)などの異常産生が生じ、肝腺維化の進展やさらなる肝細胞脱落に関連している成績が得られつつある。 現在、これらの血管内皮にHCVやHBVのウィルスマーカー、特にウィルス核酸の発現があるかどうかをin situ hybridization法を用い、検討している。
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