研究概要 |
初年度は(1)組織特異的染色体異常を間期細胞で検出可能か?(2)染色体異常の検出結果と組織診断との間の相関性、を知る目的で、パラフィン包埋材料を対象にDNAプローブを使ったsingle colorによるFISH法で研究を進めた。昨年度はFISH法によるデータ解析の確実性と客観性を上げる目的で、(1)dual color FISH法をおこなった。材料と方法:dual color FISH法は同一核内に異なる染色体のシグナルを同時に検出する方法である。single color FISH法でt(X:18)が確認された滑膜肉腫材料(45歳、女性)を使って検討した。可視化するために、X染色体のためにはジゴキシゲニン結合α-サテライトDNAプローブに対してテキサス赤(ロ-ダミン)を、18番染色体のためにはビオチン結合α-サテライトDNAプローブに対してアビジン化FITCを使用した。結果:同一核内に赤色および黄色のシグナルを各2個ずつ認め、single color FISH法で得られたデータの裏付けられたとともに、転座を証明する方法として、有効であると思われた。(2)42歳、女性の右脛骨に発生したchondromyxoid fibromaの核型解析を行った。モード数は2倍体、核型は46,X,add(X)(q11),t(1;12)(p13;q13),der(6)?t(6;17)(q25;q21),der(9)t(X;9)(q13;q32),add(17)(q21)で三種類の転座[t(1;12)、t(6;17)、t(X;9)]を含む染色体異常を示した。これまで軟骨腫では1番と12番染色体異常、粘液型軟骨肉腫ではt(9;22)が報告されており、本例の核型解析を組織診断上示唆に富む所見として報告した。
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