1. 消化管癌における遺伝子および染色体の不安定性 胃癌についてマイクロサテライト法を行い、replication error(RER)を約30%に認めた。若年者胃癌では、特にBRCA1領域のD17S855に高頻度であった。胃の腸上皮化生にも一部RERがあり、それは癌の周囲に限局していた。胃癌で4領域中2領域以上でRERを示す症例は、全体の約3%であったが、これらの50%は多発癌であった。 胃癌および前癌性病変についてテロメラーゼ活性とhTRの発現を検討し、大部分の胃癌および一部の前癌性病変に活性および発現が認められた。胃癌と大腸癌の大部分ではテロメラーゼの強い活性と触媒サブユニットTERTの過剰発現はよく相関していた。また、腺腫および腸上皮化生の一部においても、TERTの発現が見いだされた。 2. 消化管癌における細胞周期調節因子の遺伝子異常 胃癌、大腸癌ではcyclinEの遺伝子増幅と過剰発現が、癌の進行度と相関していた。CDC25Bの発現は、70%の胃癌で亢進しており、それは悪性度と相関する傾向にあった。CDKインヒビターp27の発現減弱は、胃癌、大腸癌ともに癌の悪性度(ステージ、深達度、リンパ節転移)と有意な相関性を示した。細胞周期調節因子の標的である転写因子E2Fに関しては、E2F-1遺伝子増幅が、胃癌、大腸癌でそれぞれ4%、25%に認められ、胃癌の40%において過剰発現が認められた。一方、E2F-3の発現は、70%の胃癌症例において減弱していた。 3. テロメラーゼ活性と細胞周期調節因子との関係 テロメラーゼ活性とcychinおよびCDKインヒビターの発現との関係を胃癌において検討し、p21、p27との相関はなかったが、cyclinEの過剰発現と相関する傾向が認められた。
|