研究概要 |
【対象・方法】皮膚の紫斑や硬結などを主訴として来院し生検の結果皮膚small vessel vasculitis(SVV)が確認された38症例43検体(男性20例、女性18例、平均年齢39.7歳)を対象とした。各症例についてHE染色を中心としてEVG,Mallory,PTAH,PAS染色ならびにIgG,IgA,IgM,C3c,fibrinogen,CD20,CD45RO,CD68の免疫染色を行い、浸潤する炎症細胞の種類により病理組織学的分類を試みた。さらにアポトーシスの関与を検討するため、p53wild型と、bcl-2に対する抗体を用いて免疫染色を行った。 【結果】1)皮膚SVVは、病理組織学的に5種類(好中球性34例・リンパ球性2例・肉芽腫性2例・好酸球性1例・その他1例)に分類可能であった。 2)アポトーシスを引き起こすとされるp53wild型は、血管炎部に浸潤する多数の好中球に強陽性、その一部を貧食したと思われるマクロファージに中等度陽性であった。一方アポトーシスを抑制する働きのあるbcl-2は、少数浸潤しているリンパ球に弱陽性であった。 【考察】今回我々は、肉芽腫生血管炎と、アレルギー性肉芽腫性血管炎ではない好酸球性血管炎と考えられる稀な症例を含むSVVの新たな組織分類を考案した。系統的疾患として血管炎をとらせる立場からみたこれまでのSVVの分類では、この2種のような血管炎を欠いており、組織学的分類としては充分でないと思われる。今後、症例のさらなる蓄積と詳細な検討を加える必要がある。一方、p53がLCVのみられる血管周囲に浸潤する好中球に陽性であったことから、LCVにおける核片出現には好中球のアポトーシスが関与しているものと推定された。また、bcl-2の染色パターンより、リンパ球自身は核片出現に積極的には関与していないと考えられた。
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