研究概要 |
最近では細胞回転のうち、増殖期にある細胞を通常の標本で検索が可能になり、現在ではG_1,S,G_2,M期の広く認識する抗体Ki-67が最も信頼されている。そこで、当院肺癌グループで収集した肺癌切除手術例で、Ki-67抗体を用い、多彩性な組織像を示す腺癌で検討した。その結果、φ1cm前後の小型の腺癌では陽性細胞は少なく、2cmを越えると陽性癌細胞が増えるが、個々で部位による分布をみると、一般的に周辺部の乳頭状増殖を示す所に陽性細胞が多く、中心部が圧倒的に少ない。ここで興味深いことは、多くの腺癌では周辺部は乳頭状、言わば高分化巣で、中心部は線維化を伴い腫瘍細胞が小型の管状増殖を示す、言わば中分化巣である。さらに、胎児型高分化腺癌では、一番未熟とされるmorula様の所は、Ki-67抗原の発現はほとんど認められず、周辺の管状腺癌を示す、言わば気管支の方への分化を示す部分で陽性細胞が多い。つまり、分化度と増殖能とは関連しない可能性が示唆される点である。今後、さらに多数例での検討が望まれる。
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