1.本邦例と北米症例のC型慢性肝炎の肝病理組織学的対比検討について 本邦例と同様に、北米より収集した成人のC型慢性肝炎23例(平均年令;42才、輸血歴;10例、輸血から肝生検までの期間は平均13年)のブロックをre-cutし、H.E.染色、Azan染色、鍍銀染色などの特殊染色を行ない、病理組織学的検討を行った。肝生検組織を、国際分類に基づいて4段階のstageに分類した。肝病変の進行した症例では炎症所見が目立ち、stageと炎症の程度とは関連があることが明かになった。組織所見では、C型慢性肝炎ではリンパ球濾胞様浸潤、胆管変性、脂肪変性等の組織変化が見られ、この点は本邦例と共通したが、本邦のC型慢性肝炎例では観察されなかったアルコール硝子体が、3例に認められた。これらの症例については、飲酒歴の有無については十分に病歴に記載されておらず、今後、詳細に病歴の検討を行う予定である。門脈域周囲に見られる蜘蛛膜様線維化は、本邦例にも種々の程度に認められたが、北米例ではより明瞭に観察される症例が多かった。肝細胞のdysplasia(Anthony)の頻度は10%と低く、その程度もB型慢性肝炎と比較して明かに軽かった。現在、両国のC型慢性肝炎について対比検討中であるが、今後、北米例の症例数を増やし、病理形態学的異同を明かにしたい。 2.肝組織計測について 本年は肝組織計測は、主に小児例を中心に行った。対照とした小児B型慢性肝炎に加え、C型慢性肝炎36例の肝生検組織を対象に、コンピューター画像解析装置を用い組織計測を行った。Sirius red染色標本を対象に、肝生検組織の全体の面積と繊維化の全面積を各症例毎に求め、肝組織全体に占める膠原線維の面積比(繊維化率:FR)を求めた。肝生検時に採取した血清を用い、血中のヒアルロン酸値も測定した。小児C型慢性肝炎では、肝病変の進展(stage)が進行した症例が少ないことを昨年度の研究で明かにしたが、FR値も2.3%(平均値)と、特に胆汁うっ滞を来たす疾患と比較して低い値を示した。小児期のC型慢性肝炎は、肝臓における膠原線維の沈着量からみても、非進行性に経過する可能性が改めて示唆された。FRと血中のヒアルロン酸値は相関し、肝臓の線維化の程度を非浸襲的に評価出来る可能性も示唆された。
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