HTLV-I関連の急性白血病、慢性、くすぶり型、キャリアーの末梢血よりRNAを取りだし、RT-PCR法により、HTLV-Iの発現及び、TCR Vβ領域の発現を調べたところ、特定のTCR Vβ領域の発現の強調および減弱は見られなかったが、ランダムなTCR Vβ領域の発現の抑制がみられた。このことより、HTLV-Iは、ウイルス特異的なスパー抗原としての役割ではなく、むしろ、TCR Vβ領域の発現のランダムな抑制はATLLの腫瘍化の過程に関連するものと思われた。 リンパ節におけるHTLV-IのDNAおよびmRNAの発現の関係を知るためPCR/ISH(polymerase chain reaction in situ hybridization)およびRT-PCR/ISH(reverse transcription-PCR/ISH)を行なった。24例のHTLV-I関連のリンパ節病変が検索された。[リンパ腫型成人T細胞性白血病(ATLL)8例、初期ATLL病変(incipient ATLL;I-ATLL)8例、反応性病変であるHTLV-I関連リンパ節炎の皮膚病性型(HTLV-I associated lymphadenitis dermatopa thic type;HAL-D)4例とHTLV-I関連リンパ節炎の傍皮質腫大型(HTLV-I associated lymphadenitis enlarged paracortical type;HAL-EP)4例]PCR/ISHでは、ウイルスDNAは、リンパ球に同定され、その他の細胞には見られなかった。またATLLの症例では、リンパ節の構成する細胞の40-60%にウイルスDNAが、I-ATLLでは5-20%に、HALでは、5-1%以下と極く小数の細胞に見られた。RT-PCR/ISHを用いたHTLV-IのウイルスmRNAの同定では、PCR/ISHと同様、リンパ球系の細胞に同定された。しかし、ウイルスmRNAを発現する細胞数は、プロウイルスDNA陽性細胞の数より、小数で、症例の間で、ばらつきが見られた。これらの結果から、HTLV-Iの感染及び活性化が、HTLV-Iの標的Tリンパ球の悪性化を促進するものと考えられた。
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