研究概要 |
はじめにマイクロマニュピュレーターを改良した組織マイクロダイセクション法の有効性を確認する目的で採取する細胞と得られるDNA量を調べた。ホルマリン固定パラフィン包埋材料を4ミクロンの厚さで薄切し、我々の方法を用いて組織マイクロダイセクションを行った場合、200-400個の細胞を採取することによって2-3ngのDNAを抽出することができた。理論的に1つの細胞の持つDNA量は12-15pgと推定されるから、上記の採取、抽出量は推定値をもとにした概算と大きな矛盾はない。また数十個程度の細胞数で十分PCRの解析が可能であることもわかった。 次に我々の組織マイクロダイセクション法を用いない場合と用いた場合でのloss of heterozygosity(LOH)の発見し易さのちがいを調べる目的で肺腺癌を用いて3p(D3S966),9p(D9S157),17p(TP53),17q(D17S791)の各locusのPCR-LOHを解析した。17個のinformativeなlocusが得られ、そのうち10個は我々の組織マイクロダイセクション法を用いないでもLOH陽性で5個は陰性であった。残りの2個は我々の方法で陽性であったが、通常の組織マイクロダイセクション法ではLOHを確認できなかった。以上の結果よりマイクロマニュピュレーターを応用した組織マイクロダイセクション法が微小で正常細胞が混入した組織を用いたPCR解析に有効であることが示された。現在この方法を使って、肺癌のarbitrarily primed PCR(AP-PCR)法を行っており、特に肺小細胞癌では22qのテロメア側に共通した欠失部分があることがわかった。
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