研究概要 |
前年度に詳細に解析し、十分に有効な組織マイクロダイセクションが行えることが確かめられたので、この方法で採取したヒトがんのDNAを用いて以下に示す解析を行った。 (1)肺腺がん94例のDNAを組織マイクロダイセクション法を用いて採取し、その染色体欠失をpolymerase chain reaction-loss of heterozygosity(PCR-LOH)法にて2p,3p,9p,17p,17qのかくlocusについて解析した。その結果、小型ながら進行がんと考えられる腫瘍では26.8%の割合でLOHが見つかったが、生物学的に非常に予後の良い、上皮内がんとでもゆうべき腫瘍にも19.8%の割合でLOHが認められ、染色体の欠失は肺腺がんの発がんの非常に早期から起こっている遺伝子異常であることが明らかになった。また一葉(左上葉)内に100個以上のatypical adenomatous hyperplasia(AAH)が認められた症例を用いて、肺腺がんの前がん状態と考えられるAAHについても組織マイクロダイセクションにて採取したDNAを用いて染色体の欠失を解析した。するとAAHの中にも欠失を認めるものが見つかり、上記の推測が正しいことが確かめられた。 (2)開発した組織マイクロダイセクション法を用いて採取したメタノール固定肺がんDNAについてarbitrarily primed PCR(AP-PCR)法を行い、スクリーニング的に個々の肺がんに存在する遺伝子異常を解析した。すると肺腺がんでは染色体7番で欠失が41.7%に認められ、1,8,13番で増幅が40%以上に認められた。扁平上皮がんでは染色体2番の増幅が63.3%に認められた。興味あることに小細胞がんでは染色体22番の欠失が非常に高頻度(84.6%)に認められたので、このPCR産物をクローニングしてさらに詳細にその染色体部位を解析すると、このPCR産物は22q13.3に位置することが明らかとなった。
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