研究概要 |
我々は、ヒトパピローマウイルス16型ウイルスのE6蛋白質(HPV16-E6)が転写調節する宿主遺伝子cDNAをdifferential hybridization法によりクローニングし、解析を行った。これらの遺伝子群の約2/3は、HMG-IY(high mobility group protein-I[Y]),prothymosin-α、ornithine decarboxylaseなどの細胞周期によりその発現が変動する遺伝子群であった。これらのcDNA中で未知の新規遺伝子RA3は、細胞の増殖期に発現しており、細胞密度が上昇し接触阻止による増殖抑制が働くとその発現が抑制された。一方、接触阻止による本遺伝子の抑制はHPV16-E6蛋白質により解除された。 この新規遺伝子の塩基配列決定の結果、cDNAサイズは、1.3kbで、コーディング領域に他の既知の遺伝子とのホモロジーはなく、特徴的なモチーフ等も見いだされなかった。 一方、本遺伝子発現は、prothymosin-αおよびJUNの発現と連動していることが明かとなったが、prothymosin-α発現は、c-myc遺伝子プロモーターのE2Fモチーフを介して HPV16E6により活性化されていた。また、JUN/ATF2へテロダイマー形成をHPV16E6が促進し、CREモチーフを持つ下流の遺伝子群が活性化されることが明らかになった。以上の結果から、本遺伝子発現は、c-mycあるいはJUN/ATF2により転写調節される遺伝子群の下流に存在し、細胞増殖機構に関与しているものと考えられた。
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