本研究では、高血圧発症に関与する染色体領域の確定とその領域の絞り込み、遺伝的背景のより均一な遺伝的高血圧モデルとその対照ラットの新たな確立を目的とし、ラット第一染色体上の高血圧に関与する領域のみがSHRSPから由来するコンジェニックラットの作製を試みた。 (1) ラット遺伝子マーカーの単離 候補領域をカバーするために必要なマーカーの単離を試みた。 a)マウス、ヒトゲノムとの比較からこの領域に存在する可能性の高い遺伝子を選び、対応するラット遺伝子のマーカーを単離した。これにより、マウス、ヒトとの間に比較遺伝子地図を作ることが出来るとともに、コンジェニック作製に必要なマーカーを得ることが出来た。 b)ラットゲノム全体にわたり、高血圧ラット(SHRSP)と対照ラット(WKY)間で多型を示すマーカーを単離するため、randomly amplified microsatellite polymorphisms(RAMP)法(Wu et al.1994)を応用して遺伝子地図を作製した。 (2) バッククロス・ラットの作製と遺伝子型のチェック SHRSPとWKYの交配を開始し、F1を得る。更にF1とWKYを交配してBackcross第1世代(BC1)を得る。(1)によって得られたマーカーを用い、ラット第1染色体上の高血圧遺伝子領域をスクリーニングし、この領域がSHRSPとWKYとのヘテロ接合体となっている個体をとってWKYもしくはSHRSPに戻し交配する。これを繰り返してBC5世代まで作製し、現在兄妹交配によりこの領域がSHRSP homozygousになった個体を作り、血圧の検討を行っている。当該領域を6つの小領域に分けていずれの領域を有する個体で血圧の上昇がみられるか検討中である。
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