われわれはこれまでに、マウス白血病RL♂1細胞の腫瘍特異的CTLの標的抗原の由来蛋白はAkt分子であることを明らかにした。Akt蛋白はPI3キナーゼを介したシグナル伝達に関与しているが、RL♂1細胞の腫瘍抗原として発現したAkt分子の変化、発現量、及び、細胞内局在などの生化学的な解析を行い、悪性形質発現における役割について検討する。 1、Akt分子の変化、発現量、及び、細胞内局在などの生化学的な解析を行うために、 (1)合成ペプチドをKLHをキャリヤ-とし、家兎を免疫して、ウエスタンブロットおよび免疫沈降可能な抗体を作成した。 (2)得られた抗体を用いたウエスタンブロット法による解析の結果、RL♂1細胞からは正常胸腺細胞に検出される56KのAkt蛋白以外に、遺伝子解析より推定された分子量と一致する59Kの蛋白(RL-Akt)が検出された。また、RL-Akt蛋白は正常Aktに比べて、蛋白レベルで数十倍多く発現されていることが判明した。 (3)RL-Akt蛋白は細胞質分画および細胞膜分画各々にウエスタンブロットで検出され、細胞質および膜に存在することが判明した。 2、抗原遺伝子RL-AktをNIH3T3細胞にトランスフェクトし、形質の変化を調べた結果、 (1)RL-Aktトランスフェクタント細胞は軟寒天中でコロニーを形成することがわかった。 (2)RL♂1細胞は1%血清濃度下で増殖がみられ、血清要求度が低いが、トランスフェクタントにおいても、同様に血清要求度が低いことが判明した。 以上の結果より、RL-Aktの過剰発現および膜への局在は、PDGFレセプター→PI3キナーゼ→Akt→---の経路での効果的なシグナル伝達をもたらし、RL♂1細胞の血清低要求性などの悪性形質発現に大きく関与していることを示唆している。
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