研究概要 |
我々が樹立したT細胞株(STO-2)はPI5,6,7,8および9の5つの異なる好酸球遊走因子を産生するが、各遊走因子はそれぞれ異なる生物作用を示した。また、これらの因子の多く(PI6,7,8および9)は現在発見されている好酸球遊走因子と異なる因子と予想されていた。これまで好酸球が関与するヒト疾患患者の好酸球を用いて5つのSTO-2由来ECLに対する遊走能を検討したが、過好酸球症候群や木村氏病患者の好酸球はPI5ないしPI6の分画のみ遊走する事を明らかにした。このことから患者好酸球はすでに末梢血の段階で正常と異なることが示唆され、疾患の診断や予後との関係が予想された。本年の研究では、STO-2由来の5つの遊走因子の精製を進め、そのうちECF-PI7についてはアミノ酸の一次構造の一部が明らかにされ、現在遺伝子工学的手法を用いて、DNAのクローニングを展開中である。またECF-PI5およびECF-PI9についても高度の精製が目前でアミノ酸一次構造決定の準備中である。臨床応用に関してはアトピー性皮膚炎患者の好酸球の上記好酸球遊走因子に対する反応性を検討した結果、合併症の有無や重症度によって好酸球の反応が異なることを明らかにした。さらに、気管支喘息患者の好酸球を用いて我々の遊走因子や既知の因子に対する遊走能を検討すると、重症度、とくにステロイド使用の必要性の有無を知ることができると思われた。好酸球性肺炎患者の場合には再発しない単純性ないし急性好酸球性肺炎患者と再発を繰り返しやすい慢性好酸球性肺炎患者の鑑別が上記の方法で可能であることや、治療効果の判定にも利用される可能性が示唆された。今後好酸球のフェノタイプ等を検討し、さらに好酸球遊走因子の高度精製品やリコンビナント製品を作製し、好酸球のヘテロジェナイティと疾患の病態や予後の判定との関与を明らかにしていきたい。
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