ウサギのLPS胸膜炎をモデルに、その早期に産生されるサイトカインを標的にして、遅延型血管透過亢進に関っているメディエーターを明らかにし、遅延型血管透過亢進の機構の解明を試みた。その結果、ウサギのLPS胸膜炎では血管透過亢進は2相性を示し、H1ヒスタミン拮抗剤は即時型透過を完全に抑制したが、遅延型透過は全く抑制されなかった。この炎症で最も早期に産生されているサイトカインはTNFαとIL-8であり、産生のピークは約2時間にあり、遅延型血管透過亢進のピークに一致していた。LPS胸膜炎でのIL-8の産生は抗TNFα抗体で約60%が抑制されたが、TNFα産生は抗IL-8抗体では抑制されなかった。遅延型血管透過亢進は、抗TNFα抗体投与または抗IL-8抗体投与によって約90%が抑制された。TNFα投与ではIL-8産生と遅延型透過に類似した血管透過亢進が起こるが、この透過亢進は抗IL-8抗体でほぼ完全に阻止できた。一方、IL-8の投与ではTNFαの産生は誘導されず、抗TNFα抗体はIL-8による血管透過亢進を阻止できなかった。また、ホストの好中球を枯渇させると遅延型血管透過亢進は完全に消失するが、即時型透過は抑制されず、TNFαの生産は正常ウサギと同様の産生量があり、IL-8の産生量は約65%に減少することが判明した。IL-1raを炎症局所に投与してIL-1βの機能を阻止しても、TNFαおよびIL-8の産生、即時型、遅延型いずれの血管透過亢進も影響を受けなかった。また、IL-1βを注射しても血管透過亢進は起こらなかった。以上より、遅延型血管透過と炎症早期の白血球浸潤は密接に関連しており、TNFαによって誘導された胸腔の常在細胞あるいは白血球が産生するIL-8による白血球浸潤が遅延型血管透過に関与していることが明らかになった。
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