研究概要 |
1.Embryonic stem(ES)細胞の心筋細胞へのin vitro分化モデルの確立 ES細胞株(J1)を3日間浮遊培養し、形成されたembryoid body(EB)をmultiwell dishに移す方法により、培養開始後7日目に約20%のEBに拍動が出現し、9日目には84%のEBに拍動が認められた。Fotonic sensorによる解析で拍動している心筋細胞集団では、同期性収縮が起こっていることが確認された。 2.RT-PCRによる心筋分化過程における遺伝子発現の解析 心筋特異的蛋白質であるmyosin heavy chain(MHC)_α及び_βcardiac isoformやmyosin light chain(MLC)-2vは、拍動する心筋細胞の出現と一致して、発現が見られた。心臓で発現するギャップ結合蛋白質connexin(Cx)であるCx43,Cx40,Cx45のうち、Cx43とCx45はES細胞の未分化な時期から心筋細胞への分化する過程を通じて発現が認められた。一方、Cx40の発現は心筋特異的蛋白質と同様に心筋細胞の出現以降にみられ、心筋で発現しているCxでもその種類によって異なった発現調整が行われていることが明らかにされた。蛍光抗体法により、Cx43蛋白質の局在は、MHCを発現している心筋細胞のみならず、MHCを発現していない非心筋細胞にも観察された。 3.Lucifer Yellowのマイクロインジェクションによるギャップ結合細胞間コミュニケーション能の解析 細胞間のコミュニケーションは、未分化ES細胞間、拍動する前のEBの細胞間、拍動しているES細胞由来の心筋細胞間で認められた。しかし、拍動している心筋細胞と周囲の拍動していない細胞間には、コミュニケーションは認められず、未分化ES細胞が心筋細胞に分化する過程においた、細胞間コミュニケーションのコンパートメント形成が起こることを明らかにした。 以上より、Cx40の発現が心筋の初期分化に密接に関係していることが示唆された。これらの結果は、Oyamada Yet al.Exp.Cell Res.229:318-326(1996)として発表された。
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