研究概要 |
成熟ラット肝臓から小型肝細胞(幹細胞)を効率よく分離する方法を検討した。肝細胞はcollage naseによる分散後、ほとんどの成熟肝細胞は50xg1分間の遠心により沈殿するが小型肝細胞もこの画分に多く含まれる。しかし、個々バラバラになった小型肝細胞は上清中にも含まれる。そこで上清を用いてその中に存在する小型肝細胞の単離を試みた。percoll gradientを高速遠心にて作製し、比重の差を利用して小型肝細胞を分離しようとしたがstellate cells(伊東細胞)と線維芽細胞との完全分離はできず、又、コロニーの出現効率も悪かった。 上清画分からのコロニー形成を指標に各種増殖因子の影響を調べた。EGF,TGF-α,HGF,acidic FGFのコロニー形成能はほぼ等しく、コロニーを構成する細胞数ではTGF-αを培養液に加えた時が最も良かった。 ヒト肝臓から小型肝細胞の分離を試みた。高年齢者の肝細胞であり、コロニーの出現率は良くなかったが、コロニー形成は認められ、ヒトの肝臓にも幹細胞に相当する細胞が存在することが解った。 増殖期の肝細胞が増殖を止め、分化するときに遺伝子の転写調節が急激に変化すると考えられるが、そのときに重要な働きをするであろう因子を検索した。肝臓に多く発現している転写因子にはHNF-1,-3,-4,C/EBP-α,β,δなどがあるがそのうち、HNF-3γ,HNF-4,C/EBP-α,-βの発現が十分になされていることが肝細胞特異的な高分化機能を発現するようになるためには必須であることが解った(論文投稿中)。
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