研究概要 |
成熟ラット肝臓から小型肝細胞(small hepatocytes)を効率よく分離する方法を検討した。肝細胞はcollagenaseによる分散後、50xg1分間の遠心により得られた上清をさらに50xg5分間遠心した。150xg5分間の遠心を繰り返すことにより多くの大型の肝細胞が死ぬため、small hepatocytesを多く含む細胞浮遊液が得られる。small hepatocytesはコロニーを作るように増殖をし続けた。この細胞は増殖因子を培養液中に加えなくても増殖するが、TGF-αを加えるとその増殖が良く促進された。 small hepatocytesのコロニーは非実質細胞、特に肝上皮様細胞や星細胞に囲まれるとその増殖が抑制され、それらの細胞がコロニーの下に潜り込むとsmall hepatocytesは徐々にその形を変え、立方形や直方形になる。つまり、small hepatocytesはその体積を増し、背丈が高くなる。超微構造を観るとミトコンドリアやペルオキシゾームなどの細胞内小器官が発達し、グリコーゲン顆粒が豊富で明らかに成熟した肝細胞であった。肝細胞と非実質細胞の間にはtypeIV collagenやlamininに富んだ基底膜様構造ができていた。成熟化した肝細胞間にはtight junction,gap junction,desmosomeなどの結合装置が良く発達し、毛細胆管が形成されていた。Fluorescein diacetateを投与して肝細胞のpolarityを調べるとfluorescenceがその毛細胆管内に分泌され、tight junctionによりシールされている毛細胆管が網の目のようにつながっている像を観ることができた(論文投稿中)。in vitroで肝組織に類似した構造を作ることに成功した。この結果をさらに発展させて人工肝臓を作ろうと考えている。
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