血管炎において、好中球抗体MPO-ANCAはリスクとして病態に関連していることが明らかになってきている。しかし、MPO-ANCAの値が、必ずしも血管炎の病態を反映していない場合もあり、MPO-ANCAが高値であっても重篤化と関連しないことから、MPO-ANCA値は、血管炎の1つのリスクと考えるのが妥当ではないかと考えられる。重篤化には、MPO-ANCAの対応分子MPOに対するエピトープが関係している可能性があった。リコンビナントMPO断片をセットとしたパネルをつくり、エピトープ解析用とした。MPO-ANCA高値を示した患者血清のMPO-ANCAのエピトープをウエスタンプロットにて解析した結果、MPOの長鎖(H鎖)のNおよびC末端に単独で反応するエビトープが重症化と関連していることが示唆された。プレートにコートしたリコンビナントMPO断片は、ウサギのポリクローナル抗体による反応性を確認し、エピトープ解析用に十分対応できることが明らかになった。本ELISAシステムを血管炎患者の血清のエピトープ解析に供した。一方、さらに、H鎖のN末端のリスクエピトープの特定をするために、H鎖のN末端のリコンビナントMPO断片に相当する部分を10分割して、その部分に対応した合成ペプチドを作成し、H鎖のN末端のリスクエピトープに単独で反応した血清とH鎖のN末端との反応の阻害により反応性を特定した。その結果、N末に単独反応したMPO-ANCAは、特定の部位のペプチドによって阻害された。本研究でのMPO-ANCAのリスクエピトープの解析によって、病態との関係を明らかにすることが可能になった。
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