研究概要 |
本研究の目的は、細胞に形態変化を起こす蛋白質の活性を簡便に調べる方法を確立すること、及び、その方法を用いて、肺小細胞癌培養細胞を神経様細胞へ分化させる分子を同定し、肺小細胞癌細胞の分化機構を解明することである。今年度に行なった研究によって得られた新たな知見は、 1、蛋白質をドットした膜(ウェスターンブロッティング用)上で細胞を培養し、その細胞の形態を観察することから、蛋白質の持つ機能を解析する方法を確立した。 2、蛋白質を電気泳動(SDS-PAGE)後、ウェスターンブロットした膜上に細胞を培養し、その細胞形態を観察することから、活性を持つ蛋白質のバンドを同定する方法を確立した。 3、上記研究法を用いて、肺小細胞癌培養細胞を神経様細胞へ分化させる分子を、肺腺癌培養細胞の培養上清中から見いだした。すなわち、肺腺癌(PC-9)の培養上清をSDS-PAGEした後、その蛋白質を膜にブロットし、その膜上に肺小細胞癌培養細胞(Lu-134A)を培養し、一日後、細胞を固定、染色し、細胞の形態を観察した。その結果、分子量約95kDa近辺のバンド上の細胞が、神経細胞様突起を伸展していることを認めた。このバンド上の蛋白質は、既知の細胞分化因子(ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、IVコラーゲン等)に対する抗体とは反応しなかった。この結果を、1996年の癌学会において報告した。また、肺小細胞癌培養細胞株(Lu-134A)が、ポリエチレンイミンや、肺腺癌培養細胞培養上清によって、著しく長い神経細胞様突起を伸展し、神経様細胞に分化することをJapanese Journal of Cancer Research(Vol.88,No.2,P.176-183,1997)に発表した。 新しく見いだした細胞分化因子の解析を今後進める計画である。
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