研究概要 |
本研究の目的は、細胞に形態変化を起こす蛋白質を簡便に解析する方法を確立すること、及び、その方法を用いて、肺小細胞癌培養細胞を神経様細胞へ分化させる分子を同定し、肺小細胞癌細胞の分化機構を解明することである。 今年度に行なった研究によって得られた新たな知見は、 1、蛋白質を二次元電気泳動後、ウェスターンブロットした膜上に細胞を培養し、その細胞形態を観察することから、細胞形態変化誘導活性を持つ蛋白質を、二次元電気泳動上のスポットとして確認する方法を確立した。すなわち、細胞外基質の一種であるフィブロネクチンをトリプシンで部分消化したものを、二次元電気泳動した後、膜にブロットし、その膜上にBHK-21(baby hamster kidney)細胞を培養し、細胞形態を顕微鏡を用いて観察した。その結果、フィブロネクチン細胞結合ドメインに対する抗体に反応する二次元電気泳動スポットの上に乗った細胞が、形態変化を起こし膜に強く伸展しているのを観察した。膜にブロットされた蛋白質の一次構造を決定する技術は確立している。 すなわち、細胞に形態変化を誘導する蛋白質の精製、同定に役立つ有力な方法(二次元電気泳動-セルブロット法)を新たに確立した。 2、上記研究法を用いて、肺小細胞癌培養細胞を神経様細胞へ分化誘導する分子を、肺腺癌培養細胞培養上清中から、二次元電気泳動のスポットとして見いだした。この結果を、1997年の癌学会において報告した。また、肺小細胞癌培養細胞株(Lu-134A)が、ポリエチレンイミンや、肺腺癌培養細胞培養上清によって、著しく長い突起を伸展し、神経様細胞に分化することをJapanese Journal of Cancer Research(Vol.88,No.2,P.176-183,1997)に発表した。 3、肺小細胞癌細胞を神経様細胞へ分化誘導する分子の一次構造解析を、二次元電気泳動-セルブロット法を用いて進める計画である。さらに、未知の細胞形態変化誘導物質の解析を、本方法を用いて進める計画である。
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