DNAおよび染色体分析から大腸癌では1番染色体短腕で欠失、染色体転座などがみられることから癌抑制遺伝子の存在が強く示唆される。そこで、1番染色体上の癌抑制遺伝子を単離するために、正常1番染色体短腕34-36領域の移入により癌形質の抑制された大腸癌細胞と、36領域一部が脱落し癌形質が再発現されたリバータント細胞のcDNAとの間でサブトラクションを行い、cDNAライブラリーを作製した。移入細胞でのみ強く発現しているクローンを選別するために、1番染色体移入細胞とリバータント細胞のpoly(A)RNAからのcDNAプローブを作製し、cDNAライブラリーをスクリーニングした。さらにノーザンブロット分析により移入細胞でのみ発現していることを確認したクローンのインサートのシークエンスを行いホモロジー検索をしたところ、既知遺伝子との類似性は見い出されなかった。そこで、得られたクローンのインサートをプローブとして大腸癌、正常粘膜での発現を調べたところ正常粘膜でのみ強く発現していることが分かった。さらに、組織間での発現を調べた結果、小腸、大腸で強く発現していた。現在、得られたクローンをプローブとして、正常粘膜cDNAライブラリーをスクリーニングし完全長cDNAを得ることを試みている。
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