Minマウスと種々の近交系マウス間のF1個体における腫瘍発生の観察から、一部の近交系、特に日本産野生マスス由来の近交系がMin変異による腫瘍発生を強く抑制することを見いだした。この野性マウス中の修飾遺伝子の数及びそれらの染色体上の位置を推定するために、F1個体をMinマウスの親系統であるC57BL/Jに戻し交配してN2を作成した。既知の修飾遺伝子Mom1(Modifier of min-1)との異同を明らかにするために、N2分離個体256例についてMom1遺伝子近傍のタイピングを行ったところ、70%の例でMom1の遺伝子型との間に相関が認められ、この野性マウス中に存在する修飾遺伝子の一つがMom1であることが強く示唆された。一方、解析の過程でMom1とは別に腫瘍発生を抑制する修飾遺伝子やMom1の作用に拮抗的に働く修飾遺伝子が存在することが明らかになった。現在、これらの遺伝子群の染色体上の位置を明らかにするためにN2分離個体の数を増してマイクロサテライトマーカーによるQTL解析を行っているところである。また、複数の遺伝子間の相互作用の解析にはcongenic系統の樹立が不可欠であるため、現在、幾つかの修飾遺伝子候補領域についてcongenic系統の作成を試み始めている。
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