マウスApc遺伝子に変異を有するMinマウスは消化管に腫瘍を自然発生するが、このMin変異による腫瘍の発生はマウスの遺伝的背景により大きな影響を受けることが知られている。我々は日本産野生マウス由来の近交系がMin変異による腫瘍発生を特に強く抑制することを見いだし、Minマウスの親系統であるC57BL/6Jと野生マウス間の戻し交配マウスを用いて、関与する遺伝子群の解析を行ってきた。マウスゲノム全体について、マイクロサテライトマーカーを用いてselective genotypingやDNA pooling法によりQTL解析を行った結果、以下の知見を得た。 1. この野性マウス中に存在する主要な修飾遺伝子の一つは、4番染色体にマップされている既知の修飾遺伝子Mom1(Modifier of min-1)である。 2. Mom1以外に、腫瘍の発生を抑制する複数の修飾遺伝子が存在する。 3. Mom1とは逆に、腫瘍の発生に対して促進的に作用する複数の修飾遺伝子が存在する。 これらの修飾遺伝子群の遺伝子本体の解明と遺伝子間の相互作用の解析にはcongenic系統の樹立が不可欠であるため、現在、候補領域についてcongenic系統の作成を行っている。
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