研究概要 |
1.IL-5 transgenic mouse(IL-5Tgマウス)に広東住血線虫を感染させると、対照のC3H/HeNマウスに比べて骨髄、末梢血ならびに髄液における好酸球応答が有意に高く、逆に脳内虫体の回収数は有意に少なく、また虫体は有意に小さい。IL-5TgならびにC3H/HeNマウスの血清では感染後5日、また髄液では7日以降に抗原特異的IgA抗体が検出されたが、そのレベルはIL-5Tgマウスの方が高い。IL-5Tgマウスの蜘蛛膜下に寄生する虫体の周囲には著名な好酸球の浸潤が認められ、好酸球は虫体の表面で脱顆粒している。2.IL-5Tgマウスの腹腔内へ予めCdSO_4を投与して腹腔滲出好酸球を集め、コラーゲンをコートした培養プレートで培養することによりマクロファージを除去し、純度80%以上の好酸球を得た。この好酸球からAckermanら(1983)の方法により特殊顆粒を分離し、このものをPBSあるいは0.025M sodium acetate,0.15M NaCl(pH4.2)の液中で超音波破砕し、顆粒から塩基性蛋白質を溶出させた。この塩基性蛋白質はSephadex G50でゲル濾過し、eosinophil peroxidase,eosinophil cationic proteinとeosinophil-derived neurotoxin,ならびにmajor basic proteinの3つのピークを得た。3.ゲル濾過前の粗顆粒蛋白質を用いて、in vivtroにおける広東住血線虫幼若成虫に対する傷害作用を調べたところ、顆粒蛋白質の非存在下では全く傷害が認められないのに、顆粒蛋白質の存在下では18時間後に25%の虫体に虫体体表の破壊や消化管の突出などの傷害が認められ、42時間後では42%の虫体に傷害が認められた。この傷害効果はMTT法によっても確認された。以上のことから、好酸球がin vivoで広東住血線虫を傷害するばかりでなく、in vitroにおいても好酸球の塩基性顆粒蛋白質が虫体を傷害することが分かる。
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