研究概要 |
本研究では,住血吸虫類の保有する宿主関連配列が宿主の防御免疫を回避する機構に関与しているのかどうかを異種宿主間移入実験で解明することを目的とした.これまでに得られた知見は次の通りである:1)マウスの高度反復配列(B2)のプライマーセットを用いたpolymerase chain reaction(PCR)では,この配列が日本住血吸虫及びマンソン住血吸虫ともに感染3週後の虫体には検出されなかった;2)マウスの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIα_1領域の^<33>P標識プローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより,そのシグナルが主として両種住血吸虫成虫の外被に沿って存在することがわかった;3)それ以外にも,MHCクラスIのα_2領域が日本住血吸虫雄成虫とマンソン住血吸虫雌雄成虫DNA中に,β_2ミクログロブリン領域が両種雌雄成虫,さらにMHCクラスIIのα_1領域が日本住血吸虫雄成虫とマンソン住血吸虫ミラシジウム,β_1領域が両種ミラシジウム,α_2及びβ_2領域が両種雌雄成虫とミラシジウムのDNA中にPCRにより検出された;4)免疫組織化学的検査により,MHCクラスI抗原の発現はマンソン住血吸虫雌雄成虫で,クラスII抗原の発現は日本住血吸虫の感染3週後の虫体で認められた;5)ジゴキシゲニン標識のB2配列をプローブとしたin situ PCRによる検索で,この配列は日本住血吸虫成虫の卵黄腺や間充織の核に局在することがわかった.しかし,マンソン住血吸虫成虫ではそのシグナルが認められなかった.これらの知見を基礎として,シリアンハムスター由来両種住血吸虫DNA中及びC57BL/6マウス由来両種住血吸虫のシリアンハムスターへ移入後のDNA中のマウス関連配列の検索と産卵状況の観察を現在進めている.
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