胸腺外分化T細胞は、リステリア等の細胞内寄生細菌感染の初期感染防御において重要な役割をになっていることはすでに報告されている。一方、原虫を含む寄生虫感染におけるその防御機構への関与は明確ではない。研究代表者らは原虫感染の系として、ネズミマラリア(P.yoelii)の強毒株(17X)と弱毒株(17XL)、リーシュマニア(L.major)、蠕虫感染の系として、イヌ蛔虫(T.canis)、ネズミ糞線虫(S.venezuelensis)を用いて解析を行った。 ネズミマラリア感染において、強毒株ではGranulocytosisを、弱毒株はLymphocytosisを起こす。いずれの株においても肝臓の胸腺外分化T細胞が増加するが、弱毒株の回復期において顕著であった。また、感染マウスの肝リンパ球は感染赤血球に対してキラー活性を示すことから、胸腺外分化T細胞およびNK細胞が感染赤血球を含む異常自己細胞の排除に関与することが明かにされた。蠕虫感染では、イヌ蛔虫幼虫を感染させることにより肝臓において胸腺外分化T細胞が一過性に増加する。またネズミ糞線虫の感染においても同様であり、寄生部位である小腸のリンパ球の変化も少ないものであった。寄生虫感染におけるサイトカインの産生能については、リーシュマニアを用い、細胞表面マーカーと細胞内サイトカインの産生をフローサイトメトリーで解析した。感染肝リンパ球ではIL-4産生細胞が脾細胞に比べて有意に増加していた。ネズミマラリアや蠕虫感染におけるサイトカイン産生細胞の動態については現在解析中である。 以上の結果より、原虫感染においては細胞内寄生細菌と同様に肝の胸腺外分化T細胞が感染防御に深く関与しているが、蠕虫感染ではその動態は明確になっていない。このことは蠕虫感染のHost-Parasite relationshipが原虫よりも複雑であることを示唆するものと思われた。
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