日本における蚊類の分布様相と環境変化の及ぼす影響

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670277
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 上村 清 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (00115164)
• 研究分担者: 楠本 イネス倶子 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70272903)
• キーワード: 蚊 / 分布 / 日本 / 環境変化 / 環境開発 / シナハマダラカ / ヒトスジシマカ / 発生源

研究概要

1.環境変化の著しいと思われる大阪府千里丘陵、岡山県倉敷市児島、神奈川県鎌倉市などで蚊類発生源の現地調査を1996年6月14-20日、同7月28-31日、同8月27-30日、同11月3-5日、1997年1月8-11日に行なった。その結果、広域水域に発生するシナハマダラカ、コガタイエカ、キンイロヤブカなどは激減し、イナトミシオカ、セスジヤブカなどは壊滅状態であった。また、汚水域に発生するアカイエカも環境整備のために減少していた。しかし、狭域水域に発生するヒトスジシマカは健在で、自然がある程度残されている鎌倉などではヤマトハマダラカ、キンパラナガハシカなども健在だった。草むらの少ない大阪港湾地域では発生源があっても発生が極端に少なかった。今後さらに広く環境変化の及ぼす影響を現地調査する予定である。
2.地球温暖化などで分布拡大が心配されるネッタイシマカ、ヒトスジシマカを用いて、15、20、25、30°Cの温度条件下で卵から成虫化させるまでの各期の発育日数と死亡率、雌雄差などを手始めに観察した。15°Cでは両種共に大半が死亡し、高温ほど発育期間が短縮した。さらに、卵胞と35、40°Cでの調査観察も必要であった。今後、蚊の種類の増やし、発育零点なども求めたい。
3.従来の日本における蚊類の分布記録を府県別に医学中央雑誌、各県郷土資料などから収集の作業を着手した。近似種との誤同定もかなりあるので、原典にあたり、標本も現存していれば同定の確認を行ないたい。
4.上村の保管する過去の蚊類の成虫乾燥標本、幼虫ガムクロラール封入プレパラート標本のラベルが記号のために、同定を再確認し、後世に利用できるようにラベルを詳しく記す作業に着手したが、幼虫標本の痛みがひどく、相当手間取りそうである。

研究成果

• [文献書誌] Kamimura,K.: "The mosquities (Dipteza ; Cuicidae) collected from src Lanka." Medical Entomology and Zoology. 47の2. 145-153 (1996)
• [文献書誌] 楠本イネス倶子 ほか: "エセチョウセンヤブカとコバヤシヤブカの飼育成績について" 衛生動物. 47・2. 200- (1996)
• [文献書誌] Hasanuddin,Ishakほか: "Breeding hybitats and abundance of Ae aryyptin (L_1)and Ae,albojictus (Skuse) in ruslal uress of Barrus,S,Sulsubic,gndopesta" 衛生動物. 47・補遺. 34- (1996)
• [文献書誌] 上村清 ほか: "日本に上陸したセアカゴケグモについて(1)冬期における生息状況" 衛生動物. 47・補遺. 62- (1996)
• [文献書誌] 上村清 ほか: "富山県における最近のコガタアカイエカの発生動態と殺虫剤抵抗性" 日本脳炎ウイルス生態学研究会会報. 28. 1- (1997)
• [文献書誌] 上村清: "日本脳炎媒介蚊の発生動態に関する研究" 衛生動物. 48・補遺. 20- (1997)
• [文献書誌] Kamimura,K.et al.: "Sesoonal prevalence and high insecticide resistance of Culextritsens-rhynchus,the prenipal vector of gepanese encephalitis in Japan in receptyers" Gapsnese Society of Tropical Medicine, 468 (1996)
• [文献書誌] 上村清: "家屋害虫事典-カ(蚊)" (日本家屋害虫学会編)井上書院, 468(194-207) (1996)