研究概要 |
1. 今年度特記すべきことは,自然環境の比較的温存されているロシア沿海州のウラジオストクからウスリースクにおいて,8月4日から11日,蚊発生源の現地調査を行ったことである.蚊相は北海道と近似していて,キンイロヤブカが草原溜から排水溝にいたるまで広範に分布し,ヤマトヤブカに代わってチョウセンヤブカが人工容器に多発していた. 2. 10月28日から11月7日にかけて,京都,大阪,岡山,鳥取各県の現地調査を行い,都市環境においても小容器にヒトスジシマか,ヤマダシマカなどが多発し,箕面ではヤマトハマダラカ,ヤマトヤブカ,キヨウトクシヒゲカなども採集され,周囲の環境変化が著しいにも関わらず自然環境から発生する蚊も温存されていた,岡山児島地方で再発見できなかったイナトミシオカが大阪空港の地表水溜に発見され,いずこにか温存されていると思われる. 3. 昨年度に調査した東北地方の蚊類分布調査に過去のデータを調査して加え,環動昆に投稿し,印刷中である.中国・四国地方,近畿地方,九州地方,中部地方などの資料もまとめ,逐次発表の予定である. 4. デング熱媒介蚊として注目されるヒトスジシマカ,ネッタイシマカの4系統を,15,20,25,30℃の恒温糟で個別飼育し,発育状態を比較した.ネッタイシマカは,卵が孵化すればヒトスジシマカよりも15・20℃の低温下での発育がむしろ優っていて,日本に侵入すれば繁殖する可能性が大きい.ヒトスジシマカのタイ国産,八重山産,富山産の系統による各温度下での発育の違いは明かではなかった.
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