研究概要 |
1.ブユのウイルス感染に対する感受性を検討する目的で、大分、熊本および神奈川の牛舎において採集したブユ8種2,584雌成虫個体の自然感染を調べた。採集したブユは未吸血および吸血群に分けた。吸血群は30%サトウ水を与えて、血液が消化される5日間飼育した。ブユ腫の同定後、数匹から約100匹のブユを1プールとして、乳剤をつくり、0.01Mリン酸緩衝液を加え、8,000rpm、15分、4℃で冷却遠心した。上清0.02mmを哺乳マウスにそれぞれ脳内接種した。接種後、14日間発症の有無を観察し、神経症状、麻痺症状を呈したマウスの脳組織を採取し、2回目の脳内接種に供した。その結果、熊本で採集されたキアシツメトゲブユおよびヒメアシマダラブユの吸血個体群からそれぞれウイルスが分離された。神奈川で採集されたキアシツメトゲブユ、アシマダラブユ、アオキツメトゲブユ、オオユメトゲブユでは、初回のマウス接種で陽性プールを得ており、現在2回目の接種で確認をおこなっているところである。熊本のブユ2種から分離されたウイルス株は現在、培養細胞を用いてその性状を調べ、目下同定作業中である。 ブユのウイルス実験感染は、人工血液を用いてブユに室内での吸血を誘導させる試みをおこなっているところである。これまで、血液の温度を調整したり、膜として用いるパラフィルムの厚さなどを検討し、一部のブユで吸血行動が認められている。この装置の改良を図り、安定した吸血が誘導できた段階でウイルスの経口感染を実施する予定である。
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