研究概要 |
平成8,9年度における研究の結果は以下の通りである. 1.ES抗原はConA存在下において1μg/ml以下の低濃度ではMLN細胞のIL-4産生を増強し,それ以上の濃度では濃度依存的にIFN-γとIL-4の産生をともに抑制した. 2.MLN細胞を3-6時間ES抗原(10μg/ml)と培養するとその後のCon AによるIFN-γ産生誘導が阻害された. 3.しかし,ES抗原は抗CD3抗体刺激によるMLN細胞のIFN-γ産生を抑制しなかった. 4.MLN細胞から分離したCD4^+およびCD8^+T細胞のmRNAの発現から、感染によりIL-3,4,5を産生するTh2タイプのCD4^+細胞が誘導されることを明らかにした.しかし感染後,CD8^+T細胞はIL-3,IL-5を発現するが,IL-4を発現しないなど,ラットT細胞ではマウスやヒトとは異なるサイトカイン産生パターンを持つ可能性も示された. 5.CD8^+T細胞はCD4^+T細胞のほぼ2倍のIFN-γ産生を行うが,ES抗原0.1μg/ml以上の濃度でIFN-γ産生が抑制された.CD4^+T細胞では1.0μg/ml以上の濃度で産生抑制が見られた.すなわち,CD4^+T細胞に比べCD8^+T細胞はES抗原によるIFN-γ産生抑制に対する感受性が10倍程度高いことを示している. 6.胸腺におけるCD4^+T細胞への分化異常を持つLECラットにおいても線虫感染により末梢CD4^+T細胞数が増加し,Th2タイプの反応が惹起されることを明らかにした. 7.Nb成虫から得られた粗抗原をイオン交換クロマトグラフィーにより部分精製し,各分画を培養液で10倍に希釈し,Con A存在下でのMLN細胞の培養に用いた.その結果,IFN-γの産生抑制とIL-4産生誘導活性を持つ分画を見出した.
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