研究概要 |
組織内で無菌的にも増殖し得る病理性の赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)と異なりその増殖が共棲細胞に高度に依存している非組織侵入性のEntamoeba disparの無菌培養系確立にはアメーバが無菌培地へ対応するための困難が多く、未だ再現性のあるプロトコールがない。両種アメーバ間には解糖系酵素のうちhekisokinase:HKのアイソザイムパターンに違いがみられ、そのHKのタイプがE.histolyticaの場合にはglucokinaseと考えられていることから、E.disparにおいては違うタイプのHKを推定しglucose以外のhexose、手始めにfructoseの増殖への影響を検討した。培養実験の結果からE.histolyticaではfructoseを利用できないのに対しE.disparでは無菌培養に近づけた条件下(熱,H_2O_2そしてホルマリン等で処理したCrithidiaや細菌を増殖促進因子として添加した培養条件)で顕著にglucoseを加えた場合よりも安定して増殖することが示された。fructoseは植物ではfructose-6-phosphateへ主としてリン酸化されるのに対し、動物ではfructose-1-phosphate(F-1-P)への系が主な経路となっている。E.disparの場合もF-1-Pを経て解糖系に入るものと推測している。現在、生化学的にHKを含め両種アメーバの解糖系酵素について比較検討するとともに、得られた情報の培養系への応用、またnon metabolicな増殖促進因子を加えることでのE.disparの無菌培養確立にもこの培養系は有用と考えられることから、ムチン等の既知の増殖促進物質についてもその効果の検討を行っている。
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