研究概要 |
1.まず濾胞の退化に関わると思われる細胞内プロテアーゼ、カテプシンB,L,Hの基本的な活性測定条件、とくにpreincubationにおけるpHおよび時間について調べた。吸血後3日の雌アカイエカより摘出した卵巣のホモジネートをpH2.5、3.5、4.5、5.0、5.5、6.8の6段階のpHで、5、10、15、20、30、および40分間preincubationすると、pH4.5で20分preincubationした場合に、カテプシンBおよびLにおいて活性のmaximumが得られた。カテプシンHはいずれの条件でもほとんど活性がみられなかった。 2.上で得られた測定条件で、吸血後1日、2日、3日、4日、5日、および10日経た雌より摘出された卵巣中のカテプシン活性を測定したところ、BおよびLとも、2日後より活性の上昇がみられ、卵が成熟する5日後にmaximumに達し、10日後もほぼ同じ活性レベルを保っていた。 〈現在の研究の状況および展望〉 1.上の実験では、正常発育濾胞および退化濾胞の両方を含んだ卵巣全体を試料として扱っているため、両濾胞におけるカテプシン活性の差が明らかにできない。そこで、退化濾胞が顕著に観察できる吸血後3日目の雌から摘出した卵巣を、実体顕微鏡下で解剖し、退化濾胞と正常発育濾胞を別々に集めて試料とし、カテプシン活性に差があるか検討中である。 2.同様に、退化濾胞および正常発育濾胞中に存在するカテプシン分子が、活性型であるかプレプロ型であるか調べるため、ゼラチン・SDS-PAGEを試みている。この方法が成功すると、上に述べた合成基質を用いた生化学的測定では明らかにできない退化濾胞と正常発育濾胞中のカテプシンの活性動態の差をみることが期待できる。
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