研究概要 |
1.蚊の発育卵巣中のプロテアーゼを、カテプシンB,L,Hの合成基質を用いて調べたところ、BおよびL,特に後者の活性が、卵巣の発育に伴って急増することがわかった。最適pHはB,Lいずれも4.5で、中性では活性がほとんどないこと、またE64などのシステインプロテアーゼ阻害剤で完全に活性が抑えられることから、これらプロテアーゼはカテプシンであると推察された。 2.次に退化濾胞でこれらカテプシン用プロテアーゼが実際にはたらいているか見るため、吸血後2〜3日の卵巣を、実体顕微鏡下で退化濾胞、正常発育濾胞に分け、それぞれの卵黄粒を抽出した後、合成基質を含んだバッファー中でインキュベートし、蛍光顕微鏡で観察したところ、退化濾胞から抽出した卵黄粒に強い蛍光が見られた。 3.カテプシンBおよびLは産生で初めて活性化されるので、退化濾胞が実際に酸性になっているか調べるため、吸血後2〜3日の雌アカイエカより摘出した卵巣を、アクリジンオレンジを含んだバッファー中でインキュベートしたところ、退化濾胞に強い蛍光が認められた。 4.最後に、Takara Apoptosis Detection Kitを用いて吸血後2〜3日の雌より摘出した卵巣を調べたところ、退化濾胞のみに、アポトーシスを示す蛍光が認められた。 これらのことから、吸血後の濾胞の退化は、まず何らかの因子により細胞内が酸性となり、そのため卵黄粒内のカテプシン用プロテアーゼが活性化され、それが卵黄タンパクあるいは濾胞全体の速やかな分解を起こすためと考えられる。そしてこの退化は、栄養(吸血量)に見合った数の卵を成熟させるための積極的な細胞死、すなわちアポトーシスによるものと推察される。カテプシンの分子量について現在ゼラチンSDS/PAGE法の改変を行って調べている。
|