本研究は、蠕虫感染におけるIgE依存性の感染防御能とIgE産生量規定遺伝子に支配されるIgE産生能との関係を検討し、さらにその遺伝子座を決定することで、蠕虫感染防御能に関わる遺伝子としてのIgE産生量規定遺伝子の性質を明らかにすることを目的として行われた。昨年度の研究でNC/Ngaマウスがアトピー性皮膚炎様の症状と著しい高IgE血症とを自然発症することを見いだした。このマウスのIgE産生亢進はIgEクラスに限定され抗原非特異的であることから新しいIgE産生量規定遺伝子の存在が想定されることから、交配実験を行った。NC/NgaとBALB/cの交配によるF1は雌雄ともにIgE低応答性であった。IgE高応答性と低応答性の個体数の比はF2世代のマウスで15:1でみられ、F1とNC/Ngaのもどし交配によるN2世代マウスでは3:1となった。すなわちNC/NgaにみられるIgE高応答性の形質は常染色体上の2つの遺伝子によって支配され、劣性に遺伝することになる。この遺伝子はそれぞれieh1とieh2と呼ぶことにした。現在ieh1とieh2遺伝子によるIgE高応答性と旋毛虫感染防御能の関係について解析中である。一方アトピー性皮膚炎の発症はIgE応答性とは異なる遺伝子の支配を受けることが交配実験から示された。ちなみに皮膚炎発症の形質は常染色体上の単一遺伝子によって劣性に遺伝するこたがしめされ、遺伝子をdermと命名した。もう一つのIgE産生量規定遺伝子として知られるSJL/JマウスのIgE低応答性を支配する遺伝子座については、交配実験によるN2世代マウスについてマイクロサテライトマーカーを用いて連鎖解析を進めているが同定に至っていない。
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