1、 ツツガムシ中のOrientia tsutsugamushi(Ot)の存否及び血清型を確認する蛍光顕微鏡法を開発した。 2、 モノクローナル抗体により、L.pallidum、L.fletcheri、L.arenicolaの3種それぞれに1血清型のRが共生していることが判明した。これは1家系、1個体に複数の型が共生するという従来の知見と相反する。 3、 京都府でツツガムシ各種の未吸着幼虫一個体ごとのリケッチア保有を蛍光抗体法で調べたところ、フトゲツツガムシで17.7%という極めて高い保有率を記録するとともに、アラトツツガムシに0.16%と低率ながらリケッチアの保有を確認した。 4、 新潟県のアラトツツガムシの未吸着幼虫よりリOt1株の分離に成功した。アラトからの分離は過去に報告が1例あるのみで、未吸着幼虫からの分離は初めてである。この分離株はかつて新潟で患者より分離された株と型特異抗原蛋白遺伝子が同一で、アラトが恙虫病の媒介者となっている可能性が示唆された。 5、 北海道野幌地区で野鼠よりカワムラ、アラト、ホッコクツツガムシのいずれかに共生していたと思われるリケッチア3株を分離し、この株の型特異抗原蛋白遺伝子はフトゲツツガムシから分離した株とほぼ同一であることを示した。これにより血清型(型特異抗原蛋白が決定している)を同じくするOtが2種以上のツツガムシに共生していることが明らかとなり、ツツガムシとリケッチアの血清型との関係は、単純なものではないことが示唆された。 6、 新たに20株の型特異抗原蛋白遺伝子の塩基配列を決定したところ、この遺伝子の変異は極めて多岐にわたること、その分布には地理的な要因があることが示唆された。これはツツガムシ種の地理的分布を反映したものと考えられた。
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