Orientia tsutsugamushiを保有するツツガムシ幼虫の唾液腺細胞内には多数のリケッチアが存在し、これらは幼虫が哺乳動物に寄生し組織液を吸入する際に、その最外層に唾液腺細胞の細胞膜を被って腺腔に放出される。腺腔内には、これらのリケッチアとは別に直径100〜280nmの球形の小顆粒が多数観察される。これらの顆粒の多くは内部が無構造である。腺腔に放出された顆粒の最外層は、唾液腺細胞の細胞膜で被われている。腺細胞の遊離面に存在する微絨毛先端の細胞質内にも、腺腔内に見られる小顆粒と同様の顆粒が数多く認められる。これらの顆粒は、腺腔から導管へと移動し、やがて宿主内に注入される可能性がある。唾液腺細胞内にもこれらの顆粒が多数分布する。顆粒の外被膜はOrientia tsutsugamushiと同様に電子密度の高い細胞壁外層と密度の低い細胞壁内層から構成されることからリケッチアに由来するものと考えられる。特に細胞内部が融解し崩壊しつつあるリケッチアの周辺部に集積して観察される。これらから崩壊したリケッチアの外被膜の断片がin vitroで観察されているようにループを形成して多数の小顆粒を生産していると考えられる。また一部は、培養細胞内で認められているように完全と思われるリケッチアの細胞壁の一部が部分的に突出し、これが離脱して顆粒を形成しているようである。一部には内部に構造物の存在が認められる顆粒も存在する。唾液腺細胞内ではリケッチアの分裂像も観察され、これらの増殖に関与し小顆粒は形成されていると考えられる。
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