(1)Hly遺伝子の同定:大腸菌内で、シャトルベクターを用い、豚丹毒菌染色体の遺伝子ライブラリーを作製した。この際、親株として、豚丹毒羅患豚より分離され、かつ病原性を保持している事が確認されている豚丹毒菌を使用した。得られたライブラリー中より、羊血液寒天上にて溶血を呈するクローンを分離した。 (2)Hly遺伝子の遺伝解析:各種制限酵素により遺伝子地図を作製し、Hly産生に必須の最小遺伝領域を特定した後、その全塩基配列を決定した。更に、データバンクを利用して、決定された塩基配列・アミノ酸配列を、他の細菌性Hlyの配列と比較したが、ホモロジーの高い配列は検出できなかった。 (3)Hly遺伝子産物の解析:産生されるヘモリジンを用い、ウサギによる抗血清を作製した。しかし、大腸菌に困る抗血清作製は成功せず、現在、融合蛋白を遺伝子工学的に作製しウサギを免役しているところである。 (4)Hly遺伝子の診断への応用:クローン化された遺伝子は、豚丹毒菌の一部の血清型に特異的に存在し、特に病原性の強いことが知られている菌株には一般的であった。このことは、今回クローン化した遺伝子が豚丹毒菌の病原性に強い菌株を検出する方法に利用可能であることが強く示唆された。 (5)Hly非産生変異株の作製:Hly産生が、豚丹毒菌の病原性発現に関与しているか否かを明確にするために、Hly非産生変異株の作製を試みた。しかしながら、豚丹毒菌のDNAの形質導入が現時点では成功せず、種々の条件を検討している。 以上の研究結果は現在投稿準備中である。
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