研究課題
基盤研究(C)
緑膿菌感染症に有効な化学療法剤は限られているが、重症患者においは、β-ラクタム剤として、第三世代のセフェム類(代表薬セフタジヂム、CAZ)やカルパペネム類(代表薬イミペネム、IPM)が優れた抗緑膿菌剤として汎用されている.当研究者は近年、これらの薬剤に同時に耐性化した緑膿菌が、CAZ/IPMを水解する質域の広いβ-ラクタマーゼ:Extended-spectrum(ESP)β-lactamaseを産生し、その遺伝子(b/a_<ESP>)が伝達性プラスミド上の特定の領域(インテグロン)に組み込まれた形で存在することを見いだした.現在院内で増加しつつあるCAZ/IPM耐性の緑膿菌をとりあげ、その耐性化機構をESPβ-lactamase遺伝子に焦点をあて、インテグロンへの組み込み機構を調べ、薬剤耐性遺伝子の伝播の機構を分子のレベルから明らかにすることが当研究の目的である.平成8年度の研究成果は、以下のとおりである.1.由来の異なるカルパペネム(IPM)耐性緑膿菌80株について、ESP-lactamase産生の有無を調べたところ、その内12株からIPMを水解するESPβ-lactamaseが検出された.2.bla_<Esp>遺伝子の塩基配列からPrimerを作り、PCR法により調べると、すべてのESPβ-lactamase産生菌からbla_<Esp>遺伝子が検出された.bla_<Esp>遺伝子がインテグロン構造内に組み込まれているかどうかを調べるために、bla_<Esp>保有株についてAncestor integron(InO)の検出をPCR法にて行ったところ、3株からInOが検出された.4.臨床分離株におけるbla_<Esp>遺伝子のインテグロンへの組み込み機構をみるために、bla_<Esp>/InOから、InOのみ、またはbla_<Esp>カセットのみのDNAを単離し、モデル実験系を作製した.
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