研究概要 |
優れた抗緑膿菌β-ラクタム薬である、第三世代セフェム類(代表薬セフタジヂム、CAZ)とカルバペネム類(代表薬イミペネム、IPM)を水解するβ-ラクタマーゼ、Extended-spectrum(ESP)β-lactamaseをコードする遺伝子bla_<ESP>は、インテグロン構造(InO)に組み込まれており、カセットとして遺伝体間を伝播する。 本研究では、bla_<ESP>カセットにつき以下のことを明らかにした。すなわち、遊離カセットは、特定の7塩基配列(GTTRRRY)を有す環状構造DNAであり、そこに存在するbla_<ESP>は末端に特異的な127塩基をもつ。モデル実験系によりbla_<ESP>カセットがInOに存在するIntegraseに依存してInOへと組み込まれることが証明された。 臨床分離株においては、緑膿菌以外のグラム陰性桿菌、Esherichia coli,Enterococcus cloacae,Serratia marcescens,Acinetobacter baumani,Shigella flexneriにおいて、bla_<ESP>カセットの存在を、PCR法とESP β-lactamase活性測定により証明した。bla_<ESP>カセットは、多くの場合伝達性プラスミドに存在するInOに組み込まれていた。これらの結果は、臨床分離株におけるbla_<ESP>の伝播の機構が、bla_<ESP>カセットのインテグロンへの挿入によりプラスミド間を、更にプラスミドの接合伝達により細菌間を、伝播することであると考えられる。 更に、Shigella flexneri伝達性プラスミドに存在するカセットのβ-ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列を調べることにより、bla_<ESP>遺伝子そのものに進化の前身を見いだした。すなわち、β-ラクタマーゼ遺伝子そのものも、基質域の狭いものからESPβ-lactamaseへと、基質域拡張化への進化を示していた。
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