研究概要 |
抗結核剤リファンピシンの抗酸菌による不活化機構としてこれまでリファンピシンの21位の水酸基のリン酸化および23位の水酸基のグルコシル化を報告してきた。今回、さらにMycobacteriumによる不活化機構の解明を目的に検討した研究した結果、Mycobacteriumでは他の抗酸菌と明らかに異なり、リファンピシンの23位の水酸基をリボシル化する新しい不活化機構の存在が示唆された。そこで多くのMycobacteriumについてリボシル化の有無を検討した結果、非結核菌性抗酸菌であるM.chelonae subsp.abscessus,M.flavescens,M.vaccae,M.parafortuitumおよびM.smegmatisがリファンピシンのリボシル化活性を持つことが明らかになった。M.smegmatis 607株のリボシル化遺伝子を組み込んだE.coli K12株の細胞破砕液を用いてcell free系で検討した結果、基質としてNADやNADHを用いた場合においてリファンピシンのリボシル化が観察された。これらの実験からリファンピシンのリボシル化酵素の活性発現にADP関連化合物が必須であることが明らかになった。また、リボシル化物が生成されるための中間体を検討するために細胞破砕液を用いて中間体の作製を進めた結果、リボシル化物の中間体物質と考えられる物質(R-2)を精製することができた。精製したR-2について、二次元NMR、HR-FAB-Massを駆使してその構造を検討した結果、ADP-リボシル化したリファンピシンが新たに得られた。さらにR-3と命名した中間体の構造研究を進めているが、これらの結果から、リファンピシンのリボシル化物はADP-ribosylated rifampicinが作製されて、脱リン酸化を受けて生成されることが明らかになった。
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