研究概要 |
我々はウサギ顆粒球より内毒素(LPS)と結合し,その活性を中和する18kDaの塩基性抗菌性蛋白(Cationicanti-microbial protein;CAP18)を発見し,その全一次構造を決定した。さらに,ヒト顆粒球からもCAP18ファミリーに属するLPS結合蛋白質を発見しC末端32残基からなるペプチドが活性ドメインであることを明らかにした。平成8年度はヒト由来のペプチド(20〜34残基)を用い,エンドトキシンショックモデルについて検討した。成績;LPS結合活性(1)30merが最も活性が高く次いで27mer,22merであった。(2)27merからC端側3個のアミノ酸(Asn,Leu,Val)を切り取ったペプチドではLPS結合活性が1/8に低下した。(3)32merペプチドのGly,Asp,PheをそれぞれArg,Lys,Argで置換すると活性が2〜4倍に高まった。抗菌活性(1)E.coli,S.typhimurium,Klebsiellaに対する抗菌活性は30merが最も高く次いで27mer,22merであり,LPS結合活性と平行した。(3)腸管出血性大腸菌E.coli O157:H7に対しても抗菌活性を示した。LPS致死活性の防御(1)LPSとペプチドとを混合し37℃,30分インキュベート後にマウスにi.p投与した結果,LPS対照の生残率36%に対し30merでは88%,27merでは72%と有意に高まった。(2)in vitroでのインキューベションなしに,27merペプチド,LPSを同時にi.p.投与した場合もペプチドの投与量に依存して生残率が有意に高まった。サイトカイン産生に対する抑制;(1)LPS投与1時間後血中のTNF-α活性が増加したが、これがペプチドの投与量に依存して制御された。CAP18のC末端27残基のペプチドがE.coliO157に対しても抗菌活性を示すこと,また,LPS致死活性を防御することが認められた。平成9年度はより活性の高いペプチドの合成と感染実験を計画している。
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