研究概要 |
グラム陰性菌による敗血症などでは細胞壁から遊離したエンドトキシン(LPS)が種々の細胞を刺激して炎症性サイトカインを遊離させエンドトキシンショックやDICなどを惹起する。敗血症性DICに対しては種々の治療法が試みられているが,なかでも感染初期に菌を叩き,菌体からのLPS遊離を抑制し,かつ,LPSの細胞への結合をブロックすることが最も重要と考える。我々はウサギおよびヒト好中球より,抗菌,抗LPSおよび抗凝固活性をもつ蛋白(CAP18)を発見し,その全一次構造を明らかにした。今年度はヒトCAP18のC末端の22〜34残基からなる合成ペプチドを用いて抗菌および抗LPS活性を中心に検討した。 【結果】(1)LPS結合活性は30merが最も活性が高く次いで32,27mer,22merであった。(2)27merからC端側3個のアミノ酸(Asn,Leu,Val)を切り取ったペプチドではLPS結合活性が低下した。(3)32merのGly,Asp,PheをそれぞれArg,Lys,Argで置換すると活性が高まった。(4)大腸菌,サルモネラ菌などに対する抗菌活性も30merが最も活性が高かった。(5)腸管出血性大腸菌O157に対してもこれらのペプチドは抗菌活性を示した。(6)LPSによるリムルスの活性化が30および27meペプチドで抑制された。(7)LPS刺激によるマクロファージからの組織因子産生も抑制された。(8)27merペプチドとLPSをそれぞれ腹腔内投与すると,LPSによる致死が防御された。(9)LPS投与1時間後の血中TNF活性の増加も,ペプチドの投与量に依存して抑制された。 以上のことから,CAP18のC末端27残基のペプチドが抗菌活性を示し,エンドトキシンショックを防御することが確認された。従って,好中球由来のCAP18は感染防御因子としての役割をもつこと,敗血症性DIC治療のための新しい戦略となり得ることなどが示唆された。
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