Haemophilus influenzaeによる気管支肺炎は上部気道の上皮細胞に付着・侵入した菌が上皮細胞とともに下気道に落下し、mucociliary clearnce機能の低下した部位に定着・発症すると想定した。莢膜非保有株の方が細胞への付着能が高い実験成績を報告していたので、莢膜非保有菌を細胞へ付着・侵入させたCBO(cell-bound oraganisms)を感染菌とした結果、ホルマリン処理で気道障害を起したマウスでは気管支肺炎の成立を細菌学的および病理学的に確認した。しかし、同条件マウスに菌懸濁液を感染しても感染症は惹起されなかった。以上の成績から、細胞へ付着・侵入した菌が下気道へ到達すること、および気道障害が起こっていることが必要であることが明らかになった。 このCBO法を用いて莢膜b型株による敗血症・髄膜炎モデルの作成を試みた結果、感染3日後よりマウスの死亡が確認され、死亡マウスの心血および脳からH.influenzaeが検出された。病理学的には気道系では炎症がほとんど確認されず、肺の一部分に炎症像が観察された。肺内菌数は莢膜非保有株感染群とほぼ同じであるが、病理学的炎症像はに莢膜非保有株感染群に比べ軽度であった。また、H.influenzaeのfimbriaeは付着に重要であることが明らかとなっているが、今回作成した敗血症・髄膜炎モデルで死亡率で比較したところ、fimbriaeを持たない株の方が病原性が強いことが明らかとなった。この成績から、病原性は付着・侵入の段階ではfimbriaeを発現する菌が発現しない菌より強いが、総合的(死亡率)にはfimbriaeを発現しない菌の方が強いと考えられる。
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