乳幼児に発症すると重症化し易いH.influenzae性髄膜炎を予防するために現在欧米ではワクチンが開発され、臨床応用が開始されている。従来、臨床の病態に類似した実験モデルが確立されていなかったので、今日まで基礎的なワクチン評価は行われていない。我が国においても、ワクチンの臨床使用が考慮されていることから、CBO法による気管支肺炎モデルを基にマウス敗血症・髄膜炎の作成を試みた。その結果、莢膜b型株感染により死亡率約40%となった。また、感染後マウスの血液および脳から菌が検出され、脳からの検出菌数は血液に比べ明らかに多かった。気管支肺炎モデルと同様CBO法でマウス敗血症・髄膜炎モデルを作成できた。 細菌の細胞や粘液層(ムチン)への付着において、莢膜保有株中でfimbriaeを発現する細菌の付着能はfimbriaeを発現しない菌に比べ著しく高く、fimbriaeがこの過程で重要な働きをしていることは明らかである。しかし、主に敗血症・髄膜炎患者から分離されたH.influenzaeはfimbriaeを発現していない事実がある。 fimbriaeの病原的役割という観点から判断すると、これら2つの事実は相反している。そこで、fimbriaeの病原的役割を本研究で作成したモデルで検討した。単層培養細胞に対する付着能が高いfimbriaeを発現する株よりfimbriaeを発現していない株の方がマウスに対する菌力は強かった。そこで、この現象を解析したところ、fimbriaeを発現している菌の方が血清殺菌作用を受けやすいこと、およびC3の結合量が多いことが明らかとなった。これら成績はH.influenzae性敗血症・髄膜炎においてfimbriaeの病原的役割が少ないことを示している。
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