研究課題/領域番号 |
08670323
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
多村 憲 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (50027314)
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研究分担者 |
福原 正博 新潟薬科大学, 薬学部, 助手 (70238509)
浦上 弘 新潟薬科大学, 薬学部, 助教授 (80139732)
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キーワード | Orientia tsutsugamushi / マクロファージ / 感染防御 / 恙虫病リケッチア / 一酸化窒素産生 / TNF産生 |
研究概要 |
恙虫病病原体であるOrientia tsutsugamushiには、マウスを斃す強毒株と斃さない弱毒株が存在する。本研究は、株間でこのような差異を生ずる原因を病原性発現機構の面から解明することを研究の目的とした。強毒株であるKarp(KP)株をマウス腹腔に接種すると、腹腔内のマクロファージ(Mφ)及び好中球数の急激な増多が認められ、且つそれらの細胞中でKP株は旺盛に増殖してマウスは死亡した。一方弱毒株であるKuroki(KR)株の接種では、若干のMφ数の増加が見られたが、好中球数の増加は殆ど認められず、しかもKR株はこのMφ中では増殖せず、マウスは生残した。マウス滲出Mφ及びMφ様株化RAW264.7細胞への感染実験では、KP株はこれらの細胞内で増殖したが、KR株の増殖は抑制された。RAW細胞への感染で、KR感染細胞でのNO及びTNF産生は非感染細胞あるいはKP感染細胞のいずれの場合に比べても常に高く、経日的に増加した。KPとKR株を混合感染すると、両株の増殖は単独感染時と同程度であったが、NOの産生はKR単独感染の場合より低下し、KR感染によるNO産生がKP感染により抑制されることが判明した。混合感染の場合のTNF産生については実験毎に測定結果の変動が見られ、明確な結論を得るに至らなかった。またKP、KR単独感染についてNO産生阻害剤で感染RAW細胞のNO合成を阻害しても両株の増殖に影響はなかったが、TNFを抗TNF血清で中和すると、KP株では増殖率が若干上昇し、KR株では明瞭な上昇が認められた。以上の成績より、KR株感染では、Mφ培養上清中に多量のTNFが産生され、且つKR株はこのTNFに高い感受性を示すため、KR株はMφ中で増殖できなくなり、これがKPとKR株の病原性の差異となって現われていることが示唆された。
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