研究概要 |
1.ヒトに病原性があると報告されているレジオネラ属菌20菌種のマウスマクロファージ(Mφ)内増殖が、マウスMφの自然抵抗性を支配する2つの遺伝子Lgn1とBcgの支配をうけるかどうか検討した。その結果、 (1)調べた20菌種のうちマウスMφ内での菌の増殖がLgn1に支配される菌種はL.pneumophilaとL.jordanisの2菌種のみであり、レジオネラ属の中ではむしろ例外的と考えられた。 (2)L.bozemanii,L.micdadeiなど10菌種はLgn1^r,Lgn1^sいずれの系統のマウスMφでも増殖したが、L.wadsworthii,L.hackeriaeなど6菌種はどちらの系統由来のマウスMφでも増殖しなかった。 (3)マウスMφ内で増殖できない菌種のうち、L.wadsworthiiとL.lansingensisはモルモットのMφ内では増殖できた。このことは本菌種のMφ内増殖についてマウスとモルモットの間に種差があることを示し、この種差を決定する遺伝支配の研究を今後展開する必要があると考えられた。 2.L.dumoffiiはヒトに重篤な肺炎をおこす菌種であるが、申請者らは本菌がVero細胞に非常に効率よく侵入することを見出していた。今回新たに以下の結果を得た。 (1)その侵入がモノダンシルカダベリンで阻害されることからrecepteor-mediated endocytosisによること。 (2)ヒト肺胞上皮由来培養細胞A549にも侵入すること。 (3)モルモット気管内生菌感染実験により肺胞上皮に侵入して増殖していることが電顕で確かめられた。 (4)ヒトの肺炎死亡例剖検肺の組織標本の免疫染色によってもヒト肺胞上皮内で増殖することが観察された。 これらの結果はレジオネラ属の中には肺胞上皮細胞に侵入し増殖して肺胞上皮を破壊し、肺炎を重篤にするという病態形成機序があることを示している。
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