研究概要 |
Porphyromonas gingivalisのリピドAの構造決定を行い、1位にリン酸が結合したβ(1→6)結合のグルコサミン二量体をバックボーンとし、その2,2′位のアミノ基及び3,3′位の水酸基には、それぞれ(R)-3-OHiC17:O,(R)-3-O(C16:0)-iC17:O,(R)-3-OHC16:0及び(R)-3-OHiC15:0が結合した構造を持ち、4′位のリン酸は部分置換であることを明らかにした。Porphyromonas gingivalis由来のリピドA、LPSはリムルス活性、マウス脾臓細胞のマイトジェン活性、腹腔マクロファージのTNF産生活性、ガラクトサミン感作マウスに対する致死毒性等の調べたすべてのエンドトキシン活性において対照のサルモネラLPSに比較して約1/100程度の弱い活性しか示さなかったが、エンドトキシン不応答性C3H/HeJマウスの腹腔マクロファージ、B細胞を有意に活性化することを見いだした。この活性は、P.gingivalisリピドAを脱リン酸化した場合部分的な、また完全脱O-アシル化した場合は完全な活性喪失を示し、その活性減少はLPS応答性C3H/HeNマウスにおいて極めて類似のパターンが見られた。蛋白部分が関与しないリムルステストにおいてもこれらの化学分解化合物はまったく類似の相対活性を示した。一方、Salmonella minnesota由来のリピドAを同じ化学処理して得た脱リン酸、脱アシル化リピドAもLPS応答性マウスに対して同様な相対活性変動を示した。また脱O-アシル化によってLPS不応答性マウスに対する活性は完全に消失したが、化学処理前後のP.gingivlisリピドA中の残存蛋白含量は1.8%から2.3%に上昇すると共に、アミノ酸組成は、リジン残基に差は見られるものの、化学処理前後においてほとんど変動がなかった。さらにLPS応答性、不応答性マウスのP.gingivalisリピドAによる活性化もエンドトキシンの種類に関係なく非特異的にアンタゴニストとして作用するサクシニル化リピドA前駆体によって抑制され、その反応はいずれも用量依存的であった。以上の結果からP.gingivalisリピドAのLPS不応答性マウス活性化が微量の蛋白によって引き起こされるものではなく、リピドA構造自体によって起こることが証明された。
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