研究概要 |
下痢原性大腸菌は、患者が示す臨床症状と病原因子の種類によって、5種類に分類されている。このうち、腸管凝集粘着性大腸菌(enteroaggregative E.coli,EAggEC)は開発途上国で深刻な持続性の乳幼児下痢症の病原体であり、エイズ患者の慢性下痢とも関連する。EAggEC下痢症の病原因子として、耐熱性の腸管毒素(EAST1)が報告されている(Savarinoら、1991、1993)。一方、Nataroら(1995)は調べたEAggEC4株のうち、1株(O42株)のみがボランティアで下痢を惹起したと報告した。本研究ではこの強毒性O42株の腸管毒素EAST1遺伝子の配列が、Savarinoらが報告したものとは若干異なっていることを見いだした。また、O42型EAST1遺伝子配列が、EAggEC以外の下痢症大腸菌にも広く分布すること見いだした。分離頻度は、主要な粘着因子(CFA/IIなど)をもつ腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli,ETEC)では100%、粘着因子K88をもつ家畜病原株で88%、腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E.coli,EPEC)で20%、1型分散型下痢症関連大腸菌で6.7%、2型分散型下痢症関連大腸菌で100%,腸管侵襲性大腸菌(enteroinvasive E.coli,EIEC)で0%であった。腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli,EHEC)のEAST1遺伝子配列については現在解析中である。
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