研究概要 |
従来不明のEBウイルス(EBV)による正常Tリンパ球不死化活性の機構を明らかにするため、EBVゲノム内にネオマイシン耐性遺伝子を挿入した感染性組み換えEBVを作製し、培養中でEBV感染細胞のみを選択的に生存可能とする系を用いてTリンパ球へのin vitro EBV感染実験を行った。その結果、正常抹消血Tリンパ球へのEBV感染成立を示す所見は得られなかったが、胸腺Tリンパ球へのEBV接種によりEBNA1発現細胞が確認され、そのEBNA1陽性細胞はCD2陽性かつCD20陰性であったことから胸腺Tリンパ球の一部はEBVに感受性であると考えられた。またこのEBV感染胸腺Tリンパ球はIL-2存在下の培養で短期間増殖可能であった。しかし、その後培地中にネオマイシンを添加し培養を継続してもEBV持続感染Tリンパ球の樹立はできず、これは感染Tリンパ球が潜伏感染ではなく、徐々にウイルス産生サイクルに至るためと考えられた。以上のけっかはin vivo においても胸腺Tリンパ球にEBVが感染した場合、多くの感染細胞は不死化よりもむしろウイルス増殖に向かい、新たな感染細胞の増大により疾患を引き起こす可能性を示唆する。 現在、我々が以前に樹立したIL-2依存性に増殖するEBV感染Tリンパ球株に、Bリンパ球不死化に必須のEBNA2、EBNA3A,EBNA3C遺伝子を導入することで、Tリンパ球株がIL-2非依存性増殖能を獲得するか否か、あるいは他の形質に変化が生じるているかについて引き続き検討している。
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