研究課題/領域番号 |
08670333
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸 雅彦 北海道大学, 免疫科学研究所, 助教授 (90161439)
|
研究分担者 |
柿沼 光明 北海道大学, 免疫科学研究所, 教授 (00001735)
|
キーワード | ボルナ病ウイルス / BDV / 核移行シグナル / Nタンパク質 / Pタンパク質 / Xタンパク質 |
研究概要 |
本研究は、生体内におけるBDVの存在状態に深く関わるウイルス側の要因として、感染細胞核におけるゲノムの複製という他の動物モノネガウイルスでは例を見ないBDVの特徴に着目し、複製に必須と考えられるNタンパク質やPタンパク質がウイルスゲノム複製の場である核に如何に移行するかを解明した。加えて、新たに真核細胞での発現に成功したBDVXタンパク質の細胞内分布、およびN、P、Xの各タンパク質の相互関係について検討した。 BDVの複製機構の解析や生体内BDVを遺伝子レベルで解析するためには、ウイルスRNAゲノムの全長cDNAを調製する必要があり、その調製法として逆転写PCR増幅法を開発した。種々のプライマーの組み合わせおよび増幅条件を検討した結果、BDVゲノムのリーダー配列由来53-merプライマーとトレーラー配列由来25-merプライマーの組み合わせで、最少20ngの細胞RNAから8.9baseの全長cDNAが増幅された。本法は、生体内BDVの全長ゲノムの解析ばかりか、他のRNAウイルスの全長ゲノム解析にも応用可能であると考えられる。 BDV Nタンパク質は、他のBDVタンパク質に依存することなく、能動的にウイルスゲノム複製の場である核に移行することを明らかにした。また、その核移行には、NH_2末端近傍の9アミノ酸残基(3-PKRRLVDDA-11)が核移行シグナルとして働いており、特に、4-リジン・アルギニン・アルギニン-6は核移行活性に必須であった。 BDV Pタンパク質は、ウイルスゲノム複製が行われる感染細胞核にアクティブ・トランスポートの機構によって移行することを見出した。種々の欠損Pタンパク質やPタンパク質の部分ペプチドの解析から、Pタンパク質は少なくとも2つの核移行シグナル(NH_2末端側18アミノ酸残基19-QTLRRERSGSPRPRKIPR-36およびCOOH末端側の12アミノ酸182-PRIYPQLPSAPT-193)を持つことが明らかになった。 BDV Xタンパク質は、抗Xタンパク質抗体を用いた間接蛍光抗体法で感染細胞の核でスポット状に検出された。また、抗Xタンパク質抗体と抗Nタンパク質抗体あるいは抗Pタンパク質抗体を併用した二重免疫蛍光染色法あるいは免疫沈降法で、Xタンパク質がNタンパク質あるいはPタンパク質と複合体を形成していることを見出した。一方、真核細胞での単独発現ではXタンパク質は主に細胞質にすることから、Xタンパク質がNタンパク質あるいはPタンパク質の核移行能に依存して核に移行することが示唆された。
|